最聖お二人の住む小さなアパートの周辺にも、
この冬一番の寒気とやらが、音もなくのひそやかに、
じわりじわりと上から下から忍び寄っておいで。
なのでということでもなかったが、
甘い甘い口づけの余波から、
他でもない 愛用のコタツくんが
妙な方向へと頑張り始めた(?)ものだから。
いやあの、ほら、私たちもう寝るから、
う、ううう、うんそうだね、と
知らん顔を装いつつ、
てきぱきと…というよりは ぎくしゃくと。(笑)
いつものように、コタツを起こして壁へと立て掛け、
押し入れから布団を出して、そこへ畳んだコタツ布団を入れと、
手際もいいままに、お片付け&布団敷きをやっつけて。
いつもより微妙に早いけれど、ま・いっかと。
明かりを消して、さてのそれから、
二枚の布団と二枚の毛布、
この秋あたりからそうしているよに、
自分がまずは埋まってから、
相手のいる側の端をお互いに差しかけて合って。
ほぉらおいでと、イエスが懐ろを空けるのへ
今更照れても始まらぬ、ぽふりとブッダが収まれば
どんなに寒くとももう関係ない、
それは至福の温もりが、
甘い香りとともに じわじわほわり、
それはまろやかに立ち上がる。
「…えっとぉ。//////」
「…な、なぁに?/////」
先程、さんざんと甘く睦み合ってたあとだけに、
再び間近になった存在感、
いやさ、生身だからこその温みや肌へと、
お互い様でドキドキしておいでのお二人で。
自分をくるみ込む、いかにも男性らしい骨格の頼もしさや、
肉置き(ししおき)の堅さを、頬やシャツ越しの胸にて感じ取ってのこと、
“えと…。///////”
愛しい人を総身で体感し、ブッダ様が その頬を朱に染めておれば。
淡雪みたいなとは こういう肌や肉付きのことをいうものか、
それはまろやかで品のいい、
瑞々しくも優しい感触のする頬やら腕やらへ、
“うぁあ、気持ちいいなぁvv////////”
イエス様はイエス様で、
慈愛の根源そのものを腕の中へと封じ込めてるよな気がしてか、
まったりとろりと悦に入っておいで。
「…vv」
頬を寄せてる堅くて頼もしい胸板に手で触れて、
ああオレンジの匂いがして来たと、
髪を螺髪に戻した釈迦如来様、うっとりこんと眸を伏せておれば。
「…ブッダ。」
すぐの間近からの、やさしく低められた声がして。
なぁにと見上げたのと同時、
少し熱い手のひらが、その乾いた感触で頬に触れる。
手前に来ていた ちょっぴり堅い親指の先が、
口許へと触れながらその輪郭をゆっくりと撫でるのへ、
「あ……。/////////」
唇とはまるきり感触が違うというに、
同じ彼の温み持つ肌が、
しかもちょっぴり物欲しげな素振りを示すものだから。
先程の、ちょっぴり夢中になってしまった接吻を思い出し、
胸元や喉の奥が甘い熱を持ち、
じんわりと疼くのが 今更ながらに恥ずかしい。
それに、ちょっぴり硬くて乾いた感触は、
口づけしたおり、こちらの顎や鼻先をくすぐった
イエスのお髭の感触を彷彿とさせるから、
罪なこと この上なくて。
頬が熱くなり、口許が落ち着けなくなったブッダ様に引き換え、
「…えと。//////」
さすがに、ほんのついさっき
さんざんと貪り合ったばかりには違いなく。
まだ足りぬのかと思われないかな、なんて逡巡が、
一応はイエスの側でも沸いているものか。
そんな素振りをしておきながら、
なかなかお顔を寄せてまでは出来ないでいたところ。
“ ………え?”
懐ろに収まっておいでの愛しの君から
ちらりと見上げて来た身じろぎと共に、
布団を敷くおり、何とかまとめ直したはずの螺髪が、
さらりほどけた気配が届く。
しっとりと重みのある髪が、彼の背中の向こうへほどけ、
愛用のシャンプーの甘い香りがふわりと匂い立ったのへ。
自分からそんな“意思表示”を見せたことへ、
さすがに照れたか、お顔をこちらの胸板へと伏せかかるものだから。
「…ぶっだ。」
そうされちゃう前にとの大急ぎ。
唇へ触れさせていた指の先を、
なめらかな弧を描く おとがいへとすべらせると。
ちょっと強引だったが顎を上げさせ、
お鼻同士のご挨拶も省略しての、
蓮の蕾みたいな甘い口許 はくりと素早く咥え込めば。
「あ、…んぅ。////////」
さっきより少し熱っぽい、
でも積極的になったからかな、張りの増した唇が、
ああやっぱり頼りなくって気持ちいい。
捕まえたいのにするする逃げて、
そんな焦れったさがますますと、
もっともっとという気持ちを煽ってやまない。
唇の縁をなぞってゆくよに、丁寧についばめば、
切れ切れに零れる睦声もまた蠱惑的。
それへとまとわされた吐息の甘い熱が、
こちらの舌先でほわりと溶ろけるのがもうもういけない。
「ん…あ、やぁ…。/////////」
口許から零れた吐息を追うように、
すべらかな頬へ、そこからおとがいへと唇が逸れてゆき。
柔らかな耳たぶに ちりと口許の髭が触ったか、
「ん…っ。」
ひくり震えたその所作ごと、顎先がちょっと上がった隙をつき、
誘われるように首元のくぼみへ顔を埋めると、
その側面へと唇を這わせてゆけば。
“あ、凄い凄い…。////////”
見るからに柔らかそうで脆そうで、
ふわふわのなめらかそうだと思ってたその通り。
唇以上の繊細な柔らかさが、
しかもそちらから吸いついてくるほどに甘やかで。
「え? あ、やぁ…。//////」
さすがにこれは、想いも拠らない触れられようだったものか、
いやいやと首をすくめつつ、身を震わせるブッダなのに気づいていながら。
ああでも、ごめん、と
自分の“もっと”を優先しちゃったイエスであり。
肩先や二の腕の上から零れてくる、
すっかりとほどけたつややかな髪に頬を撫でられながら。
どこもここも、隙なく柔らかいのをしっかと確かめ切ってから、
「……う…。///////」
鎖骨の合わせ、こりと浮いてた窪みのところに、
少し強めに吸いついて……
「…………あ。///////」
そこでやっと我に返って、
あああ、しまったと……うなじがきゅうきゅうと締めつけられる。
「…ご、ごめんなさい。/////」
顔こそ離して浮かせたものの、
とてもじゃないが上げられないと、今頃になって大反省。
だってこれって、立派な無理強いなんじゃない?
ブッダに“触っていぃい?”って訊いてないし、
こんなところって、おでこや頬っぺとは違うと思うし。
「…いえす?」
「調子にのっちゃったの、ごめんなさい。」
えとあの、嫌だったよね。
わた…私 反省してるけど、けどでもあの、あのね
落ち着けないだろから、今日は私 壁際で寝るから、と
顔も見ぬまま、半ば逃げるように起き上がりかければ。
そんなイエスの頭を、
ブッダのまろやかな手が そおと捕まえる。
“…え?”
随分な無理強いをしちゃったから、
拗ねちゃったか、それとも怒っているのかな?
逃げるなんて許さんと、仏のお顔が三つ全部消えてるとか?
うひゃあと肩まですくめれば、そんな態度へこそムッとしたのか、
「そんな…怒ってるみたいに決めつけて言わないでよ。」
すぐの真上、おでこの辺りからしたブッダのお声へ、
おややぁと緊張を解き、こっそり伺うように顔を上げれば。
大きな深瑠璃色の瞳、やっぱりちょっとほど潤んでいたが、
怒っているというのじゃなくて、
翻弄されての戸惑いから、頬が火照っての潤みならしく。
抱えたような格好のままだった、
まとまりの悪いイエスの髪を、そのまま愛おしそうに撫でてくれて。
そんな所作ごとで“怒ってないよ”と伝えてくれるものだから。
毛布の中、よいしょと身をずり上げて、
一番最初の抱っこに戻ったイエスだったが、
「私が言うのも何だけど、
これって怒んなきゃいけないパターンだよ? ブッダ。」
いくら慈愛の如来様でもね、無理強いはいけないと思うのと。
一体誰の“おいた”の話だか、
愛しきお人のすべらかなめらな頬を撫でつつ、
説いて諭すように言いつのるイエスなのに、
「ううん、いいんだ。//////」
ブッダはといや、
怒ってないよと目許をたわめて頬笑んで見せるばかり。
「だからー。
そうやって甘やかすと、私どんどん図に乗っちゃうってば。」
それでなくとも日頃はしょっちゅう叱られているせいか、(笑)
何ぁんか調子が狂うなぁと、却って落ち着きなくなりかかっておれば、
「うん、それは判らないじゃないけれど。」
頬を撫でてくれるのへ、うっとりと目許を細めるばかりのブッダ様、
ついさっき、イエスがキスを落とした鎖骨の辺りを、自分の指先でなぞりつつ、
「でもね、キミのすることならイヤじゃないの。
現に怖くなかったし…。///////」
少なからずドキドキはしたけどねと、
イエスの腕を枕にし、
かっくりこと首を傾げるようにして、
そりゃあまろやかな笑み浮かべ、真っ直ぐ見上げてくるものだから。
「……もうもうもうっ、キミって人は〜〜〜っ。///////」
なぁんて可愛くて、なぁんて愛おしい人だろかと。
枕元へ外していた茨の冠が、
距離がありつつも紅ばらを満開にしちゃったほどに。
かわいい如来様からの、甘くて一途なお言葉へ、
すっかりメロメロと 呑まれてしまったヨシュア様だったようでございまし。
窓のお外のその遠く、
都内の各所じゃあ、身を切るような冴えた北風が吹きすさんでいるというにね。
小さな松田ハイツの周辺では、
うっかりと寄りついた野良猫がふさふさとした毛並みをたくわえ。
そのまま目を見張るような跳躍で屋根の上までを駆け上がると、
猫たちにしか聞こえない、けれどそれは妙なる歌声で、
近所じゅうの猫たちを集めて聞き惚れさせたほど、
それはそれはいいお声で、一晩中 愛の歌を紡いだそうで。
そうかと思えば、どこからともなく伸びた蔓草が、
アパートの隙間を覆い尽くして絡まり合い、
隙間風がぴたりと止まってくれたので。
他の住人の皆さんも、
寒かったかなぁ、いつもよりマシだったけどなぁ、なんて
ちょっぴりながら御利益を得られたそうですが。
思わぬ奇跡が起きたと知って、
後で笑顔が微妙に固まるのは誰なものか。(笑)
それを思えば、ほどほどにして下さいませね? お二人様vv
〜Fine〜 13.12.20.
*こちらのお二人の場合、
いちゃいちゃやラブラブをどこで止めればいいのやら。
時々見失っちゃいそうで、書いてる側も困ってます。
めーるふぉーむvv
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